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 8月22日宮之城町に向かう。この町を流れる川内川は日本でも屈指のホタルの乱舞する川として知られている。その支流泊野川から引かれているのが二渡新田用水路である。県道からずっと遡って行ったが,この用水路もずっと先から引かれていた。1時間近く歩いてやっとその地点に着いた。
 一番左の写真は堰が作られていて,そこから真ん中のように用水路に引き込まれていた。一番右の石碑によると,「享保14酉年から16辛年まで5.7Km作られた」とある。300年前に先人がいくつものトンネルを掘り,水を引き米作りをしたのだ。ところが,平成4年台風19号のため決壊し,工事が行なわれたという。「頭首工」とあるので,用水路の入り口をそう言うのであろう。
 一つ目のトンネルまでは直線になっている。流れは速かろうと今までの用水路がそうであったので思いこんでいたら,100cm/Sとそう速くはなかった。しかも,水深20cmで少ない。回った頃が田圃を一時干すころでもあったので調節されていたのかもしれない。魚もいて,野球のホームべースの形のブロックにカワニナが3個見えた。上流部に見たのは初めてである。
 左の写真は放水工の所である。左の絵のように放水工の所だけ広くなり,広くなったところに砂がたくさん流れ込んできていた。流速も42cm/Sと遅くなっていて魚も多かった。しかし,カワニナは見つからなかった。
 二つ目のトンネルである。およそ130mのものでこんな長いものがよくできたものだと感心する。
 次の所は驚いた。山の中なのにカワニナがたくさんいるのだ。1uに換算すると583個ぐらいいることになる。流速も48cm/Sといい流れである。それにしてもホタルがいたとしても誰も見ることのない場所があるとは初めてのことであった。
  110mほどのトンネルを抜けるとまた放水工があった。ここも狭い水路から広くなり,また狭くなるのは前のページのようである。カワニナはいない。トンネルをぬけただけでこうも違うものかとびっくりする。流速34cm/Sなのに生息しているものが違うのである。
ここを通り過ぎて県道に出る。泊野川に架かっている「ちくりん橋」の袂に出る。どう続いているのだろうかとのぞきこむと道路の下を通って,大きく右カーブして川内川と並行して流れている。また道路の下を通って道路の右に出る。このあたりはホタルもよく飛ぶところである。よく見ると,決壊したことがないと見えて昔ながらの作りである。流速62cm/Sで少しまがっているせいで,外側に流れがある。内側に砂がたまり,カワニナがいる。1uに50個ぐらいいる。水路幅は一定してないのもいい。
 前のページの2枚について説明する。左は駐車場があるところでホタルが結構飛んでいる。条件がいいのだ。右は川内川に下りていったところだ。鮎を釣る人の姿があるが、ここあたりはチリメンカワニナがたくさんいて,ホタルの乱舞がとてもきれいなところだ。
 用水路は右の写真の道路に沿ってあるところはトンネルになり,あるところは道路の右の水路となり,ずっと続いている。300年前の昔の人はすごい仕事をしたものである。
 人家の所までやっと着いた。1軒目のある所を見ることにした。左の写真の所である。流速は41cm/Sでカワニナもたくさんいた。1uあたり120はいた。次の所は1uあたり50個と少し少なかったが,ホタルがたくさん飛んでいるとのことであるのでそうなのだろうと合点した。
 この先は2002年に工事が行なわれたが横の竹藪を極力とらないようにして,側壁も工夫されていた。地域の方々の要望があったからだということで,宮之城町役場の取り組みと地域とうまくタイアップしてホタルとの共生が考えられたのである。
 右は公民館の方を見た写真であるが人家がたくさん固まってきたせいかカワニナは少なくなっているが,風景はいい。
 二渡新田用水路を「頭首工」からずっとたどってみて,次のように考えた。
1.この用水路にはずっとカワニナがいた。これは,今までの用水路が山手から水が引かれていたのに比べて,泊野小校区と白男川小校区という二つの大きな集落をかかえてきたことによるのではないか。
2.だれも見ることのないであろう山の中にたくさんカワニナがいたこと,今でこそ見る人がいるが昔は見ることのない県道の横にもたくさんカワニナがいたことは,カワニナのえさである有機物が豊富であるし,水質もいいということであろう。