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 8月22日宮之城町からの帰りに黒木に向かう。黒木は田圃の真ん中にホタルが乱舞しているところだ。定説となっている「草木」,「腐葉土」,「豊かな水」の三つが揃っているとは言えないのに,ホタルが飛ぶので興味を持っているところの一つである。今のところ,蒲生町,鶴田町とここ祁答院町でしか確認できていない。
どこから水が流れてくるのであろうかと畦道を歩いていった。まわりは田圃ばかりで遠くに農家の家,大王川の向こうに黒木集落が見えるところである。
 水路は行き止まりになっていて,左と右の水路から水が落ちていた。左の写真のように,左の水が多い。田圃からの水かと思ったら,山からの湧水であった。カワニナは1個いた。
水深4cmで田圃と田圃の間を右の写真のように流れている。草の中ではマガヤがほとんどである。水路は両側からの草に被われ,中は見えないが直線にずっと続いている。
 
 ところが,途中からカワニナが多くなった。なぜかなと右下の写真のような道路に沿って遡っていった。40cmの水路があり,冷泉の所に多く見られる黄土色のどろどろしたものの中にカワニナが多いのだ。左上の写真のようにカワニナが多い。10mは続いている。この水はどこからきているのだろうと調べると,地下から湧き出ている。黄土色のものは写真のように下だけにあるところもあれば、水路全体を覆っているところもある。前のページの右の写真のようにブロックの所に道路がある。道路の下から湧き出て先ほどの水路へと流れている。それでもその中にカワニナが生息していた。187個/1uの生息密度である。ここまでは見に来たことがないのでホタルが飛んでいるのかは分からないが,飛んでいてもおかしくはない。
 山からの湧水と今見た地下からの湧水などを集めて水はまっすぐ流れていく。水路幅70cm,流速32cm/Sで砂利も小石もある。33個/uのカワニナがずっといる。
 蒲生町でも確認したことだが,水路が一段と低くなっていると飛翔空間として高い土手と高い土手の間を利用できるので,いなくなることはないのであろう。そして,ゲンジボタルやヘイケボタルの幼虫が蛹になるため上陸して潜る土は雑草が生えている所が湿度もちょうどよく適していると言うことなのだ。だから,こんな所はあまりないが,木や薮が無くても生息できていけると言える。
 上の写真を進み,垂直になって上の右の写真の所に出る。ちょうど垂直になったあたりがカワニナが特に多い。流速38cm/Sとゆっくりした流れの中なのでカワニナも数えやすかった。1400個/uもカワニナが生息していた。川内川のような大きな川に乱舞するホタルもいいが,見通せる10mぐらいの田圃の中でホタルを見るのもいい。
 この水路は用水路とはいえない。どちらかというと「排水路」と言える方だろう。用水路に比べ,横に木や薮がなく,水は少なく,農薬は流れ込む悪条件がある中,ゲンジボタルが生息を続けられるということは,ゲンジボタルの生命力の強さであろうし,カワニナがそれだけ耐性を強くし進化してきたことによるものであろう。
 今回の報告の中では一つだけ「水路」ということになるがどこからどこまでホタルが飛んでいるかという調査と合わせて考える必要があるように思う。