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 8月20日あまりの暑さに午後涼しくなってから蒲生町に向かう。13年間ずっと蛍の飛ぶ場所は観察を続けている用水路である。でも,この用水路を遡ったことはないので,取り入れ口をめざした。近ごろできた「高牧の水」事業所に行き着く。それからずっと徒歩で2Km近く進んでも取りれ口に着かない。草が生い茂り先に進めないので,ここから戻ることにした。
 いつも見ている用水路は幅も広く水もたくさん流れているのに,流速119cm/S,水深15cm,幅60cmであった。こんな狭い水路で水もあまり流れていないので,どうなっているのだろうと疑問が大きくなった。
 杉林の間を時には暗渠となり,時には崖の下を通り抜け,同じような幅で水路は走っている。
「高牧の水」事業所の所では,右下の写真のようになっている。流速128cm/Sと速くなり,幅は50cm,水深12cmとなっていた。
ところが先に進むうちに,もう一本水路があった。右の写真の水路の方は田圃の方に行っているのに,左の写真の方は人家の下を流れている。山の湧水を集めて流れてきた小川が用水路と繋がっているのだ。
 次に行ってやっと謎が解けた。前之郷川から取り入れられた水と,左の写真の湧水とが合流して豊富な白男用水路になっていたのだ。大王原と言うところであった。
 幅50cmの前之郷川の水も勢いがいいので,道路の下の暗渠から流れ込んでいる。一方,小川からは湧水を集めてこの地点に流れ込むので流量が増えている。水路幅210cm,流速136cm/Sで合流したこともあるのであろう。速くなっている。カワニナは見えない。
 右の写真は人家が一軒ぽつんと建っている横を流れる小川である。10年ほど前,ホタルに引かれて山手の方に上っていって,ヒメボタルが飛んでいるのを見つけたところである。また,ゲンジボタルも山手にいた。そういうことで,この用水路にカワニナがいるのだろう。その下の写真の所を見つけてみても少ない。4個しか見つからなかった。
 61cm/Sと流速はちょうどいいのだが,底面は砂利なのだが少ないのだ。少し先に放水工があって,このあたりは9月の頃までヘイケボタルが飛んでいる所である。道路下の田圃と水路の所にヘイケボタルがいるのであろう。
 いつもゲンジボタルが乱舞し,車を留めてしばらくゆっくり見る場所が次の所だ。左の写真の上に見えるのが竹藪である。ここでたくさん光っているのだ。直線の水路になっていて,三面側溝である。水路幅40cm,水深40cm,流速52cm/Sでちょうどよいのだが,カワニナが少ない。しかも小石などもない。これは機械による泥掬いがあったせいではないだろうか。10mの範囲で数えても,わずか5個である。あまりにも少ない。来年のホタルはピンチである。
 鹿児島市から川内に抜ける近道のあたりまで来ると,用水路は広くゆっくり流れている。何故かなと見てみると,放水工の作り方が違う。今まで見てきたのでは,同じ幅か,広くしてあって横から水を放出するようにしてあった。しかし、ここの用水路だけは広い水路から狭い水路になっていて水を落とすようになっていた。左の写真の赤く見えるところが前のページの赤色の所になる。鉄の板があってワイヤーをゆるめると水の調節ができる仕組みだ。この仕組みだと水が全て流れず枯れることがないようだ。このせいでこの用水路にはほたるが生き続けているのであろう。手前の広いところの水路幅は270cmで,放水工の先は140cmであった。流速も17cm/Sから,34cm/Sと倍になり,壁は褐藻で汚れている感じから,きれいとさえ思われるように変わってくる。
だからであろうか。50mほど先(右の写真)は底面が砂利であることもあり,ほたるがたくさん飛ぶ。流速は62cm/Sである。しかし,今回に限ってはカワニナを見つけることができなかった。
 次の所は少し様子が違う。左の写真からの水と山からの小川が合流している。山からの小川にもカワニナがたくさんいてホタルもたくさん飛んでいたのは10年ほど前であった。今は少なくなっている。カワニナも見つけることはできなかった。
 次が一番ホタルが乱舞していた地点(一番左)である。流速34cm/Sでカワニナはちらほらいた。その右が近ごろよく飛んでいるところである。流速22cm/Sであるが砂利がほとんどなくなっていて,カワニナも少ない。

※白男用水路は湧水と川の二つの水が合流して田圃に水を配っているのだ。用水路に生活排水を流す家の数はそう多くはない。だから,普通だとホタルが乱舞していると言えるのだろう。
 しかし,今年に限って言えば,用水路の泥上げが機械によってされたので砂利まで吸い上げられ,水生昆虫に大きな影響を与えたのであろう。
 人の手で行なわれていた時代には考えられない環境の変化や悪化が悪意でないところであるということなのだ。
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